『清末家の跡取り、白の独白』

         ――私が人間であることを許されなかったのはひとえに私の弱さにあった、と今になって思う。

 

 私は清末家のただ一人の子だった。

 清末家は土地の権力者で、かつてはこの街のすべてが清末家の所有物だったほどだ。その当主として君臨しているお祖母様は、清末家において絶対であった。お祖母様が紫陽花は紅と云えば、紫陽花は紅に、朝顔は藍と云えば、朝顔は藍くなった。お祖母様男の子を3人ばかり産んだ。しかし、それぞれ病気と事故と戦争で死んでしまった。男を後継者として残せなかった自らを悔やみ、母に次こそは男児をと望んだ。しかし、生まれてきたのは女である私だった。

 清末家には代々異能の才を持つ男子が生まれた。その異能は強力で世界の法則すら捻じ曲げてしまうらしい。しかし異能の才を持つ人はケガレに弱く、魔に憑かれやすかった。

 

 私が生まれたとき、お祖母様はそうとう落胆したそうだ。代々清末家は異能によって栄えてきた。その血統を自らの生きているうちに残せなかったことを罪科と感じたに違いない。しかししばらくしてお祖母様に転機が訪れる。そう、私は清末家の

女でありながら、異能の才を色濃く受け継いだ清末家の血統を継ぐ人間だったのだ。

 私はその瞬間から、ケガレに触れず、魔に憑かれまいと、ありとあらゆる対策が講じられてきた。外で遊ぶことを禁じられ、人と会うことも許されなかった。怪我をすれば禊を、厄時が来れば儀礼を、異能を保持しながら高貴なヒトになるために。

 世のケガレには2種類ある。死のケガレと、血のケガレである。前者は人の死によって生まれる穢れである。人の死は強力な不浄を生み、魔を呼び寄せると古から神道では考えられてきた。これは時に黒不浄とも呼ばれる。後者は血液、月経、出産である。これは赤不浄と呼ばれることが多い。出産だけを白不浄とする呼び方もある。

 いずれにせよケガレとは、死と生、そして性である。

清末家に代々続く異能の才を持つ者、その全ては男である。女はただの一人もいない。異能の才を持った女性は齢十歳にしてみな死ぬ。その訳は単純だ。初潮を迎えた女性は、その経血によって穢れ、魔に憑かれて死ぬ。

 私は清末家の女性で、そして異能の才の保持者だった。私の人生は生まれた時からすでに決まっていた。齢十歳、初潮を迎えた日の夜、穢れた私は、魔に犯されて死ぬ。それが自然の摂理で、世の定めなのだ。しかし、お祖母様は、現代科学は、私の死を許さなかった。私から女性としての機能を剥奪し、私を延命させた。私は本来この時に死ぬべきヒトだったのだ。 

 私は、私の魂は、清末白という人間の肉体に鎖でつながれたまま、人形のように生きている。

 

 私は弱い人間だ。ケガレにおびえ、魔から逃れる。血を見れば昏倒し、外に出れば風邪をひく。誰からも愛されず。誰からも必要とされない。

 

文:姫条櫟